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エクスプレスニュース No.16

「成年後見制度(任意後見制度を中心に)」

認知症の方、知的障害や精神障害のある方が、判断能力(自らがした行為の結果を判断する事ができる能力)が不十分なために、預貯金や不動産等の財産管理、遺産分割協議の相続手続、あるいは身上監護(介護・福祉サービスの利用契約や、施設への入所・入院の契約締結等)などを本人自ら行う事が難しい場合があります。
成年後見制度は、このような行為を本人に代わって行うことにより、本人を保護し支援する制度ですが、あらかじめ本人が任意後見人を選ぶ「任意後見」と、家庭裁判所が成年後見人等を選任する「法定後見」の2つの制度があります。

成年後見制度の概要

16.png※1 後見:日常生活に必要な買い物も本人ができず、誰かに代わってやってもらう必要がある程度の判断能力。
※2 保佐:日常生活に必要な買い物程度は本人ができるが、不動産等の売買や金銭の貸し借り等、重要な財産行為は一人でできない程度の判断能力。
※3 補助:本人が重要な財産行為を適切に行えるか不安があり、本人の利益のためには誰かに代わってもらった方が良い程度の判断能力。

no16.図2.png

任意後見制度の流れ

1.任意後見契約の締結

本人が十分な判断能力を有する時に、本人と任意後見受任者(後の任意後見人)との間で、公正証書により契約を締結して、法務局で登記。
※任意後見受任者の統計:親族70%、士業などの専門職17%、その他13%

2.本人の判断能力の低下(法定後見の補助相当レベル)

①任意後見監督人(任意後見人を監督)選任の申立て
 本人・配偶者・4親等内の親族又は任意後見受任者が、家庭裁判所に選任を申立て。

②任意後見契約の効力発生(発効)
 家庭裁判所は任意後見監督人を選任して契約の効力を発生させ、「任意後見受任者」は「任意後見人」となる。
 ※任意後見監督人は、本人の親族ではなく士業などの専門職が選任されるのが一般的。

③成年後見業務の開始
 □任意後見人
・任意後見契約に定められた内容に従って、後見事務(財産管理や身上監護)を実施。
・報酬目安(第3者の場合)
 財産管理額が5,000万円以下:月額3~4万円
 財産管理額が5,000万円超 :月額5~6万円
 □任意後見監督人
・任意後見人の後見事務につき監督し、家庭裁判所に定期的に報告。
・報酬目安
 財産管理額が5,000万円以下:月額1~2万円
 財産管理額が5,000万円超 :月額2.5~3万円

④成年後見契約の終了(=本人死亡時)

 
任意後見制度の種類

1.将来型

①十分な判断能力を有する本人が、契約締結時には任意後見受任者に後見事務の委託をせずに、判断能力が低下した時点で任意後見を開始する場合(上記の任意後見制度の流れに沿った典型的な契約形態)。
②利用統計:約25%

2.即効型

①現在、本人の判断能力が低下しているが、任意後見契約の締結と同時に任意後見監督人を選任して、任意後見を開始する場合。
②利用統計:ほぼゼロ(判断能力が低下している場合、法定後見を利用するケースが多い)

3.移行型

①十分な判断能力を有する本人が、財産管理契約(任意代理契約)と任意後見契約を同時に締結して、判断能力の正常時は財産管理契約に従って財産を管理してもらい、判断能力が低下した時点で任意後見を開始する場合。
②利用統計:約75%

任意後見制度の問題点

任意後見制度のうち最も利用割合の高い移行型の場合に、本人の判断能力が低下したにも関わらず任意後見監督人の選任の申立てをしないため、任意後見契約の効力が発生せず、財産管理を継続してしまうケースが見受けられます(任意後見契約の不移行)。
本人は勿論のこと、任意後見監督人から監督されずに、金融機関で本人の銀行口座から現金を引き出すことも可能であるため、本人が亡くなり相続人間の遺産分割協議の際に発覚した場合には、遺産分割が長引く可能性が考えられます。
例えば、本人(A)と財産管理契約(任意代理契約)を締結した相続人(B)が引き出した現金を使い込んだ場合、本来その現金を相続できるはずの他の相続人(C)は、Bに対して、使い込んだ金額のうちCの法定相続分までの金額を返すよう求めることが可能です(不当利得返還請求)。ただし、実際に使い込まれた現金はAの預貯金のため、不当利得返還請求権があるのはAであり、この不当利得返還請求権をBとCが相続したと考えるため、相続申告時には当然にAの相続財産として計上する必要があります。

 (担当:福田)

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