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Express News

エクスプレスニュース No.17

「成年後見制度(法定後見制度)」

前回のエクスプレスニュースNo.16で取り上げた「任意後見」は、本人の判断能力が不十分になったときに備えて、本人の判断能力が十分なうちに、あらかじめ任意後見人を本人が選んで契約を締結しておく制度に対し、今回取り上げる「法定後見」は、本人の判断能力が不十分になった後に家庭裁判所に申立てることにより、成年後見人等(保佐人・補助人)を選任する制度です。

【成年後見人等の権限】
・同意権:本人が契約などの法律行為をするときに、それを承諾する権限
・代理権:本人に代わり成年後見人等が、取引や契約など法律行為をする権限
・取消権:本人が成年後見人等の同意なしに行った法律行為などを取り消す権限

17.png    ※所定の行為(民法13条1項)
     借金、訴訟行為、相続の承認・放棄・遺産分割、新築・改築・増築、賃貸借(短期賃貸借を除く)などの行為

後見等開始の申立てが多い例

本人の施設入所の必要性から、定期預金を解約するために本人と家族が金融機関へ行った際に認知症と疑われる行動を取り、金融機関側で判断能力が著しく低下していると判断されると、預金口座が凍結される場合があります。口座凍結を解除するためには、家庭裁判所に申立てを行い、成年後見人等を就けるしか方法はありません。以降、通帳・印鑑を管理し、引出しができるのは成年後見人等だけとなります。

法定後見制度の流れ

1.家庭裁判所へ後見等の開始の申立て
本人・配偶者・4親等内の親族・検察官・市町村長(身寄りのない方)などが申立て。
申立費用は、印紙や郵便切手などの実費が約8,000円(別途、医師の診断書料や鑑定料)。

2.家庭裁判所
①調査
調査官から申立人や成年後見人等の候補者に対して、申立ての経緯、本人の判断能力、生活状況や財産状況、親族の意向などについて確認。
②審問
裁判官が、本人から直接意見を聞いたほうが良いと判断した場合、本人との面談を実施。
③精神鑑定
医師による鑑定が必要となりますが、明らかに鑑定の必要がないとして、これを行わず に診断書による場合が現状。
④審判
ここまでの結果を踏まえて、後見等開始の審判を裁判官が行い、成年後見人等の選任をするとともに、申立人や成年後見人等に対し審判内容を通知。
※成年後見人等は、親族などの候補者が必ず選任されるとは限りません。家庭裁判所は本人の財産管理をより適正に行う観点から、専門的な知見を有する専門職が関与する必要があると判断した場合、弁護士・司法書士などの専門家を成年後見人等に選任します(実際のところ、親族などの候補者は選ばれずに専門職が選ばれる事がほとんどです)。また、このような専門家を成年後見等監督人(成年後見人等を監督・指導)に選任する場合があり、これらの選任について不服申立てをすることはできません。

3.法定後見業務の開始
(成年後見人等)
①後見事務(本人の財産管理や身上監護)を行い、家庭裁判所へ定期的に報告書を提出。
②報酬目安
 ・財産管理額が5,000万円以下:月額3~4万円
 ・財産管理額が5,000万円超 :月額5~6万円

4.法定後見制度の終了(=本人死亡時)

居住用不動産の処分の申立て

成年後見人等が、本人所有の居住用不動産を処分(売却、抵当権の設定、賃貸借契約の締結・解除、建物の取壊しなど)する場合には、事前に家庭裁判所へ申立てを行って許可を得る必要があります。売却の場合を例にとると、買主や売買代金を特定し、家庭裁判所の許可が得られなければ効力が生じないとする「停止条件」を売買契約書の特約事項に盛り込み、最終の売買契約書(案)を添付して申立てを行います。
家庭裁判所からこの許可を受けるためには、「本人保護の観点」と「本人意思の推測」が重要となり、例えば以下のようなケースが考えられます。
※居住用不動産の対象範囲
現在本人居住の不動産のほか、本人が将来的に住む可能性のある不動産を含むため、現在は介護施設に入所していても、退所した際には入所前の不動産に戻る予定であれば対象となります。

1.本人保護の観点
①手持ち資金が少ないので、自宅を売却して老人ホームの入所代に充てたい(売却代金が固定資産税評価額以上であれば認められる可能性大)。
②本人の介護のため、老朽化した自宅を本人の預金で建替えたい。
※本人名義の自宅を賃貸アパートに建替えるケースでは、その目的が相続税対策だけである場合には認められないのが、裁判所の一般的な判断です。

2.本人意思の推測
判断能力の低下により本人に直接確認できないが、本人は家族が安定した生活が送れることを望んでいるのではないか?という観点。
①精神障害を持つ長男のために、自宅を賃貸併用住宅に建替えて安定した生活を送らせてあげたい。
②長男夫婦と同居するために自宅を取壊し、長男名義で二世帯住宅に建替えたい。

 (担当:福田)

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