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エクスプレスニュース No.19

「遺言・成年後見・家族信託の使い分け」

前回まで、遺言・成年後見制度・家族信託について取り上げてきましたが、各家庭によって事情(家族関係・所有財産)や価値観が異なりますので、どの制度が一番適しているかは一概に言えません。しかし、これらの制度の長所や短所をしっかり踏まえ、使い分けや複数の制度を併用して利用することで、より良い生前対策に繋がります。

1.時系列による各制度の比較

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2.目的別の各制度比較

(1)身上監護➡任意代理契約、任意後見、法定後見
(2)財産管理➡任意代理契約、任意後見、法定後見、家族信託
(3)財産承継➡遺言、家族信託

3.各制度(任意後見制度・遺言・家族信託)の併用例

(1)任意後見 + 遺言

 ① 任意後見➡身上監護、財産管理
 ② 遺言  ➡財産承継

(2)家族信託 + 任意後見

身上監護が必要であるが、積極的な財産運用(賃貸不動産の売却や建替え等)を行いたい場合に併用して利用。
 ①家族信託➡信託財産(特定の財産)について、積極的な財産運用
 ②任意後見➡身上監護、信託財産以外の財産管理

(3)家族信託 + 遺言

 ① 家族信託➡信託財産(特定の財産)について、財産管理、財産承継(遺言ではできない二次相続以降の財産承継者の指定が可能、以下「受益者連続型信託」という)
 ②遺言➡信託財産以外の財産について、財産承継(遺留分対策の実施)

4.受益者連続型信託

(家族の状況と承継先の願い)

再婚している夫が亡くなった場合の相続人は、後妻及び前妻との子(長男)。夫が亡くなった後、生活資金に困らないよう賃貸不動産を後妻に相続させたいが、後妻が亡くなった後はその賃貸不動産を後妻の相続人の弟に相続させずに、長男に相続させたい。

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(1)遺言の限界

例えば、夫が「賃貸不動産を後妻に相続させる。その後、後妻が亡くなった場合は、その賃貸不動産を長男に相続させる。」という内容の遺言書を作成した場合を例にします。

後妻は相続した賃貸不動産を売却して換金・消費が可能であるため、二次相続である後妻の相続時の財産承継(後妻から長男へ)の指定は無効と解されています(一次相続の「後妻に相続」部分は有効)。
また、夫が亡くなるまでの間、賃貸不動産は夫の所有財産であり、その賃貸不動産は夫が亡くなった後に後妻の所有財産となるため、承継先(長男)を指定した後妻の遺言書を作成できるのは、夫が亡くなった以降となります。ただし、夫が亡くなった時点で後妻の判断能力が著しく低下していた場合、後妻は遺言書を作成できないため、後妻が亡くなった場合の賃貸不動産の承継は後妻の相続人である弟に相続されることになり、長男へ承継したいという夫の思いは実現できません。

(2)家族信託の検討

夫の判断能力に問題がない場合に、夫(委託者かつ当初受益者)と長男(受託者)が下記のような信託契約を締結することで、家賃収入は、夫の生存中は夫に、夫が亡くなった場合は第二受益者の後妻に帰属します(遺贈による取得)。長男は夫及び後妻が亡くなるまでの間、賃貸不動産の管理を行い、後妻が亡くなる信託終了時には賃貸不動産が後妻の相続人である弟に相続されることなく、長男への承継(遺贈による取得)が可能となります。

信託契約の例
①信託財産➡現金、賃貸不動産
②委託者(財産を預ける者)➡夫
③受託者(財産を預かる者、形式的名義人)➡長男
④受益者(実質的かつ税務上の所有者)※受益権の所有者であるため賃貸不動産の売却不可
・当初受益者:夫 
・第二受益者(夫死亡時の承継者):後妻
⑤信託期間➡夫及び後妻がともに亡くなるまで
⑥信託終了時の残余財産(信託財産)の帰属権利者➡長男

(3)留意事項

後妻の相続時に、弟には遺留分(最低限の遺産取得分)がないため問題はありませんが、例えば夫が亡くなった後に後妻が再婚をした場合には、長男が再婚者から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。また、長男は後妻にとって一親等の血族ではありませんので、後妻の相続発生時の長男の相続税額が2割増し(2割加算)となる点にも注意が必要です。

 (担当:福田)

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