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エクスプレスニュース No.21

「戸籍謄本の広域交付制度」

相続手続では、戸籍謄本の収集が必ず必要です。例えば、税務署(相続税申告)、法務局(不動産の名義変更)、金融機関(預金の払戻し)等においては、誰が相続人であるかを確認する必要があるため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本の提出が求められます。しかし、一生に何度も戸籍謄本を見るものではありませんので、相続人にとってはその収集に相当な時間と労力を要します。この戸籍謄本の収集に関して、令和6年3月1日から戸籍謄本の広域交付制度が始まり、最寄りの市区町村の窓口に請求者本人が出向き複数の本籍地の戸籍謄本をまとめて請求できるようになりました。

【相続手続に必要な戸籍】

○改製原戸籍:旧様式の戸籍謄本
  改製前の「除籍」「子の認知」「養子縁組」「離婚」の情報が記載(下記の戸籍謄本には引き継がれません)
○戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
  戸籍に記載されている全員について証明したもの
〇除籍謄本(除籍全部事項証明書)
  除籍簿(転籍・婚姻・死亡などにより誰もいなくなった戸籍)に記載されている全員について証明したもの 

1.従前からある戸籍謄本の請求

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出典:法務省ウェブサイト(戸籍法の一部を改正する法律について)

※戸籍証明書等(戸籍全部事項証明書・除籍全部事項証明書)➡ 戸籍謄本・除籍謄本が電子化されたもの

戸籍謄本の取得は、本籍地がある市区町村の窓口に請求(郵送や代理人による請求も可能)する必要があり、本籍地以外の市区町村では取得できませんでした。
そのため、本籍地に複数回の異動(転籍・婚姻・離婚等)があった場合には、異動後の本籍地の戸籍謄本も必要となるため、被相続人の最後の本籍地の戸籍謄本を取得し、そこから従前戸籍を順次遡りながら出生までの全ての戸籍謄本を揃える手間と負担が生じていました。

2.戸籍謄本の広域交付制度の開始以後(令和6年3月1日~)

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出典:法務省ウェブサイト(戸籍法の一部を改正する法律について)

①制度の概要

本籍地以外の市区町村の窓口、例えば、自宅や勤務先の最寄りの市区町村の窓口で請求できるようになり、取得したい戸籍謄本の本籍地が全国各地にあっても、1カ所の市区町村の窓口でまとめて請求できるようになりました。ただし、顔写真付きの身分証明を持参した請求者本人(代理人不可)による窓口対応のみのため、郵送による請求はできません。

②請求できる戸籍謄本の種類

平成6年の法務省令によりコンピュータ化(戸籍の改製)された戸籍謄本・除籍謄本が対象です。

③請求できない戸籍謄本の種類

コンピュータ化されていない一部の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍は市区町村間で共有されていないため、従前通り本籍地がある市区町村の窓口や郵送により請求する必要があります。また、戸籍抄本(戸籍に記載されている方のうち一人または複数人の身分事項が記載)や、戸籍の附票(住所の履歴が記載)についても、広域交付制度による請求はできません。

④請求できる戸籍謄本の対象者(請求者本人から見て下記の方)

□本人 □配偶者 □直系尊属(父母、祖父母など) □直系卑属(子、孫など)

⑤請求できない戸籍謄本の対象者(請求者本人から見て下記の方)

□兄弟姉妹 □おじ、おば □甥、姪 など

例えば、子のいない方の相続において兄弟姉妹が相続人の場合、その相続人は被相続人や相続人同士(兄弟姉妹)の戸籍謄本を広域交付制度により取得できないため、従前通り本籍地がある市区町村の窓口に請求する必要があります。

3.今後の戸籍謄本の収集にあたって

戸籍謄本の広域交付制度が開始された令和6年3月1日、法務省の戸籍情報連携システムへのアクセス集中が原因でシステム障害が発生し、市区町村の戸籍謄本が交付されない状況になりました。事前に想定していたよりも多くの広域交付制度の利用があったものと推測され、エクスプレスニュースNo.20で紹介した相続登記の申請義務化の関心の高さが伺えます。確かに戸籍収集にあたり利便性は向上しましたが、請求者本人の兄弟姉妹や代理人による取得ができず、また平成6年の法務省令によりコンピュータ化される前の戸籍も取得することができません。従って、相続手続のために今後利用するうえで、広域交付制度により取得できない不足分については、本人が従前通り本籍地の市区町村の窓口で請求(又は郵送)することも可能ですが、手間暇を考えると専門家に依頼するケースが多くなると考えます。

(担当:福田)

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