0120-32-7950 電話受付時間:平日9:00〜17:00

Express News

エクスプレスニュース No.24

「生命保険を活用した相続対策」

相続対策のひとつに生命保険の活用が挙げられます。生命保険には税法上の優遇措置があるため節税対策になりますし、遺族にまとまった現金を遺すことができるため、葬儀費用や相続税の納税資金にも利用でき、さらに相続人同士の揉め事を解消するための手段にもなります。そこで今回は、生命保険を活用した相続対策をケース別に取り上げます。

1.節税対策、納税資金対策

(1)生命保険金の非課税枠の活用

被保険者 契約者(保険料負担者) 保険金の受取人 対象となる税金
子:相続税

〇被保険者:保険の対象となる人
〇契約者:通常、保険料を支払う人
〇保険金の受取人:保険事故(死亡等により保険金の支払事由に該当)が発生したときに、保険金が支払われる人

父に相続が発生し、子が死亡保険金を受け取った場合、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、その全額に課税されるわけではありません。死亡保険金には、残された遺族の生活保障という目的があるため、「500万円×法定相続人の数」の金額を限度として、相続人が受け取る死亡保険金は非課税となります。例えば、ご高齢の父の法定相続人が3人の場合で、父が契約者(保険料負担者)かつ被保険者として一時払い終身保険1,500万円に加入します。支払う保険料と受け取る保険金はほとんど変わらないため、現金1,500万円が非課税枠(500万円×3名)と同額の死亡保険金1,500万円に代わることで、相続税の節税に繋がり、納税資金としても利用できます。

(2)生命保険を活用した生前贈与

被保険者 契約者(保険料負担者) 保険金の受取人 対象となる税金
子:所得税・住民税

上記(1)の生命保険金の非課税枠を使い切っている状況で、まだ資金に余裕がある場合に良く用いられる方法です。父が子に毎年保険料相当額の現金を贈与し、子がその資金を原資として毎年保険料を支払うというもので、父にとっては、毎年の現金贈与で相続財産が減少するため相続税の節税に繋がり、子にとっては自身の一時所得として所得税・住民税が課税されます。下記の算式の通り、一時所得の金額に1/2を乗じた額が課税の対象となるため、相続税と比較して支払う税金(所得税・住民税)が少なくなるケースが多いですが、事前の比較検討は必要です。

一時所得の課税対象 =(保険金額-支払保険料-50万円)×1/2

また、暦年贈与の相続財産への持ち戻しが、令和6年1月1日以後に順次7年に延長されたため、ご高齢の方が相続人へ贈与をする場合、相続財産への持ち戻しが不要な基礎控除110万円の非課税枠が新設された相続時精算課税贈与の利用も有効です(エクスプレスニュース№10、№11をご参照ください)。

2.遺産分割対策(生命保険を代償金として活用)

(1)特定の相続人へ多くの財産を遺したいケース

被保険者 契約者(保険料負担者) 保険金の受取人 対象となる税金
長男 長男:相続税

例えば、不動産を多く所有する父から後継者の長男に相続させたいケースや、事業承継のため自社株式を父から後継者の長男に相続させたいケースでは、相続時に代償分割を行う場合があります。代償分割とは、特定の相続人(後継者の長男)が自身の相続分を超えて財産(不動産、自社株式)を取得する代わりに、他の相続人に代償金として金銭を支払う分割方法です。
死亡保険金は「受取人固有の財産」であり、遺産分割の対象とならないため、このようなケースでは代償金を支払う長男を受取人に指定し、父の相続発生時に保険金を受け取った長男は、その保険金を他の相続人への代償金に充てます。そうすることで、例えば遺産分割の際に他の相続人から長男に対して遺産の相続分を主張されたとしても、代償金を支払った分だけ請求額を減らすことができます。
なお、このようなケースでは遺産分割協議がまとまらない可能性が高いため、相続人間の争いを防ぐために遺言書の作成とセットになります。その遺言書には代償分割を行う旨と、代償金額を記載しておくことが必要です。

(2)相続人が妻と被相続人の兄弟姉妹のケース

被保険者 契約者(保険料負担者) 保険金の受取人 対象となる税金
妻:相続税

被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、被相続人が生前に「全財産を妻に相続させる」旨の遺言書を残しておくことで遺産分割協議の必要はなくなり、妻が全財産を取得することが可能です。一方で、遺言書の作成を先延ばしにしてしまい、結果的に遺言書がないケースでは、遺産分割協議が必要となります。そこで、生命保険金の非課税枠を利用して受取人を妻にすることで、兄弟姉妹から法定相続分の主張があった際には、受け取った保険金をもって代償金の支払いに充てることができます。また、兄弟姉妹が相続人になるケースでは法定相続人の数が多くなるケースが多く、結果として非課税枠の金額が増え、その増えた分だけ代償金を確保することが可能となります。

3.二次相続対策(「生命保険契約に関する権利」の活用)

一次相続(父) 被保険者 契約者(保険料負担者) 保険金の受取人 対象となる税金
①:発生時 一次:母に相続税
②:発生後 二次:子に相続税

父(一次相続を想定)の相続発生前に、父が上記①の保険に加入します。一次相続発生時には「生命保険契約に関する権利」として解約返戻金相当額が相続財産となります(被保険者の母が亡くなっていないため、保険金は受け取れません)。この解約返戻金相当額は、父が支払った保険料の総額を下回ることが大半のため、その差額の金額だけ相続財産が減少するのと、遺産分割により母が「生命保険契約に関する権利」を取得(契約者を母にします)することで、配偶者の税額軽減を利用できるため相続税の負担が減少します。
また、受取人を子に変更(上記②参照)することで、母の相続時に死亡保険金を受け取る子は、生命保険金の非課税枠が利用できます。つまり、父の資金で負担していた保険を母名義の保険に変更することで二次相続の節税対策が図られ、父の相続発生後に母が認知症を発症した場合、母は生命保険の契約を締結することができませんので、結果として認知症対策にも繋がります。

4.最後に

上記1~3の対策に利用する生命保険は、各保険会社から出されている一般的な保険商品を使った事例、契約形態でご説明しておりますが、生命保険の基本的な機能に加え、毎年自動的に暦年贈与がされる保険商品や、障害を持つお子様のための親亡き後の資金管理機能がある商品など、特徴的な機能を備えた保険商品もあり、それらの保険商品を活用することで、更なる相続対策も可能です。

(担当:福田)

エクスプレスニュース
一覧へ戻る