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エクスプレスニュース No.25

「配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除)」

1.制度概要

配偶者の税額軽減とは、被相続人の財産を配偶者が相続する際に、配偶者の相続税を大幅に軽減できる制度であり、次の相続までの期間が短いことや、被相続人の財産形成に対する配偶者の貢献、また被相続人が亡くなった後の配偶者の老後の生活保障などを目的として創設されました。
具体的には、配偶者が相続する正味の遺産額(財産-債務)が、次のいずれか多い方の金額までは、配偶者に相続税は発生しないため、最低でも1億6,000万円までは相続税が無税となります。

(1)1億6,000万円        
(2)配偶者の法定相続分(民法で定める配偶者が取得できる割合)

法定相続人 配偶者の法定相続分
配偶者のみ 100%
配偶者・子 1/2
配偶者・親 2/3
配偶者・兄弟姉妹 3/4

□前提:配偶者の法定相続分1/2、被相続人の遺産の全てを配偶者が相続

【例1】配偶者が相続する正味の遺産額:4億円
 (1)1億6,000万円 <(2)4億円×1/2=2億円 
➡ 相続した4億円の内、2億円までは配偶者に相続税はかかりません。

【例2】配偶者が相続する正味の遺産額:2億円
 (1)1億6,000万円 >(2)2億円×1/2=1億円 
➡ 相続した2億円の内、1億6,000万円までは配偶者に相続税はかかりません。

【例3】配偶者が相続する正味の遺産額:1億円
 (1)1億6,000万円 >(2)1億円×1/2=5,000万円 
➡ 相続した1億円(全額)に、相続税はかかりません。

2.主な適用要件

(1)配偶者が「戸籍上の配偶者」であること

事実婚(内縁関係)の場合には、配偶者の税額軽減の対象になりません。

(2)遺産分割が完了していること

配偶者の税額軽減は、遺言や遺産分割により配偶者が実際に取得した財産を基に計算されるため、相続税の申告期限までに分割されていない財産については、税額軽減の対象になりません。
ただし、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付したうえで、申告期限から3年以内に分割した場合には、税額軽減の対象になります。
また、相続税の申告期限から3年を超えたケースでも、分割ができないやむを得ない事情(裁判等)がある場合には、税務署長の承認を受けることを条件に、分割ができることとなった日(判決の確定等)の翌日から4ヶ月以内に分割が完了すれば、税額軽減の対象になります。

(3)相続税の申告書を税務署へ提出すること

配偶者の税額軽減を適用した結果、相続税が発生しない場合であっても、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を上回る財産がある場合には、相続税の申告書を税務署に提出する必要があります。

3.二次相続を見据えた遺産分割の必要性

一次相続において、相続税の負担を最小限に抑えるために、配偶者の税額軽減を限度額(1億6,000万円と配偶者の法定相続分のいずれか多い方の金額)まで適用した場合、一次相続の相続税の負担は減少しますが、一方で二次相続の相続税の負担が増加することにより、結果として一次相続と二次相続を合わせた相続税の負担が多額になるケースがあります。

理由としては、二次相続では配偶者がいないため配偶者の税額軽減が適用できないことや、法定相続人の数が減少することに伴う相続税の基礎控除の減少が挙げられます。また、相続税は財産額が増えるほど税率が高くなる累進課税のため、配偶者が一次相続で多くの財産を取得すると、配偶者が元々所有していた財産と合算されることで、二次相続の相続税率が高くなり相続税の負担が増加することも考えられます。

従って、配偶者の意向と老後生活の安定を十分に配慮したうえで、一次相続・二次相続トータルの税負担を考慮した、分割方法を検討することが必要です。

4.敢えて配偶者の税額軽減を適用しない場合

(1)連続して相続が発生

一次相続(父)の遺産分割が行われないまま二次相続(母)が発生した場合でも、母の相続人(長男・次男)が一次相続(父)の遺産分割を行うことが可能です。この遺産分割により一次相続(父)の財産を母が相続することとした場合、母が取得した財産について配偶者の税額軽減を適用することは可能です。
しかし、連続して相続が発生したケースでは、配偶者の税額軽減を適用することが、一次相続(父)・二次相続(母)のトータルの税負担が有利になるとは限りません。

(2)「相次相続控除」の適用

配偶者の税額軽減の適用を受けることは任意とされているため、敢えて配偶者の税額軽減の適用を受けずに「相次相続控除」を適用することで、一次相続(父)・二次相続(母)のトータルの税負担が有利になるケースがあります。
相次相続とは、一次相続(父)の発生から10年以内に二次相続(母)が発生することをいい、短期間で同じ財産に二度相続税が課税されることを防ぐために「相次相続控除」という制度が設けられています。この「相次相続控除」は、一次相続(父)において母が財産を取得して母が相続税を納税していた場合に、二次相続(母)において財産を取得した相続人(長男・次男)の相続税から一定の金額(一次相続から二次相続までの期間が短い程、控除額が多くなります。具体的には、一次相続で母が納めた相続税を、一次相続から二次相続までの経過年数に応じて1年経過ごとに10%減額した額)を控除できる制度です。
従って、一次相続(父)において母が配偶者の税額軽減を適用して相続税が発生しない場合には、二次相続(母)においてその財産を取得した相続人(長男・次男)は「相次相続控除」の適用は受けられません。

上記(1)(2)において、一次相続(父)・二次相続(母)のトータルの税負担を有利にするためには、一次相続から二次相続発生までの期間や配偶者の固有財産などを踏まえて、その状況に応じた検討が必要といえます。

(担当:福田)

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