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エクスプレスニュース No.28

「遺贈寄附(遺言による寄附)の税務上の取扱い」

国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集(2024年版)によると、2020年の日本人50歳時の未婚率は、男性が28.25%、女性が17.81%です。
おひとり様(生涯未婚)は今後さらに増加することが見込まれますが、相続人がおらず遺言書が無い状態で相続が発生した場合、最終的に相続財産は国庫に帰属します。
自分の死後、相続財産を国庫に帰属させるのではなく、自身が望む団体等に有意義に使って欲しい。そんな想いで遺贈寄附を望まれる方が近年増加しています。

1.遺贈寄附とは

遺贈寄附は、主に「遺言による寄附」と「相続財産からの寄附」の2種類があります。

(1)遺言による寄附(寄附者:被相続人)

「遺言による寄附」は、相続財産を特定の団体へ寄附する旨を遺言書へ記載し、相続後は遺言執行者や相続人が、記載された内容に従って寄附を行います。

(2)相続財産からの寄附(寄附者:相続人)

「相続財産からの寄附」は、口頭や遺言書の付言(法的効力なし)、手紙、エンディングノートへの記載などにより、相続後に相続財産を特定の団体へ寄附して欲しい旨を相続人へ伝え、その希望を尊重して相続人の行為として寄附を行います。

(1)(2)は寄附者がそれぞれ異なるため、税務上の取扱いも異なりますが、今回は(1)の「遺言による寄附」について取り上げます。

2.遺言による寄附

(1)金銭の寄附

①相続税の取扱い(寄附先:法人)

相続税は、相続又は遺贈により財産を取得した「個人」に対して課税されます。従って、寄附を行うことで、相続人等及びその親族等の相続税が不当に減少する場合(課税逃れ)を除き、寄附を受けた法人側では、相続税は課税されません。

②法人税の取扱い(寄附先:法人)

一定の非営利法人は、収益事業(一定の事業のうち、継続して事業場を設けて営まれるもの)を行う場合のみ法人税が課税されます。しかし、その寄附による収入は収益事業に該当しないため、法人税が課税されません。
一方で、株式会社が寄附を受けた場合には、その寄附による収入に対して法人税が課税されます。

③寄附金控除の適用(所得税)

寄附先が国や地方公共団体、一定の公益社団法人などの場合、被相続人の準確定申告に より、寄附をした金額(総所得金額の40%が限度)について寄附金控除の対象となります。

(2)不動産・株式等(譲渡所得の対象財産)の寄附

①相続税・法人税の取扱い(寄附先:法人)

上記(1)金銭の寄附(①相続税、②法人税)と同様の取扱いとなります。

②譲渡所得税の取扱い(寄附先:法人)

不動産・株式等を法人に寄附をした場合、被相続人が相続時の時価によりその不動産・株式等を法人に対して譲渡したものとみなされます(みなし譲渡課税)。
そして、時価が取得費を上回る場合には、その上回る部分(含み益)を所得とみなして、被相続人の準確定申告により譲渡所得税が課税されます。

【譲渡所得税】
相続時の時価1億円 - 取得費3000万円 = 課税所得7000万円
課税所得7000万円 × 税率15.315%(※1)= 譲渡所得税10,720,500円
(※1)被相続人の死亡した年の所得になるため、住民税は課税されません。
(※2)一定の要件を満たすことで、みなし譲渡課税が非課税となる制度(租税特別措置法40条)はありますが、要件が厳しく手続きが煩雑のためここでは割愛します。

③寄附金控除の適用(所得税)

寄附先が国や地方公共団体、一定の公益社団法人などの場合、被相続人の準確定申告により、寄附をした不動産・株式等の相続時の時価1億円(総所得金額の40%を限度とし、措置法40条の適用がある場合には取得費3000万円となります)について、寄附金控除の対象となります。

3.不動産の遺贈寄附の課題

不動産を現物のまま遺贈寄附したいというニーズは増加していますが、現物不動産を受け入れる団体は多くありません。
理由としては、管理の煩わしさをはじめ、維持費や税金などのコストがかかること、また寄附を受けた不動産をそのまま利用できない場合が多く、売却する場合でも買い手がみつからないなど、売却までに時間を要するといった点が挙げられます。
そのため、遺言書を作成する前に、寄附先の団体に受入可能か相談することが必要です。

4.現物不動産の受け入れ先がない場合

(1)清算型遺贈の検討

不動産を現物のまま受け入れる団体がない場合には、相続後に遺言執行者を通じて不動産を売却し、その換価代金から諸経費や税金などを差し引いた残金の一部又は全部を金銭として寄附する換価遺言を作成します(清算型遺贈)。

(2)清算型遺贈の手続き

売却をする際には、被相続人から直接買主へ名義変更をすることはできないため、まずは相続登記をする必要があり、清算型遺贈があった場合にも、法定相続分による相続人への相続登記をすることになります。

(3)清算型遺贈の譲渡所得税の取扱い

不動産の売却に伴う譲渡所得の納税義務者について、通達等においてその取扱いは明示されていませんが、実質所得者課税(単なる名義人には課税せず、実際に収益を享受する者に課税)の考え方から、相続登記によって名義人となった相続人ではなく、寄附を受け入れる団体が納税義務者と考えるのが一般的とされています。
実務上は、遺言執行者が被相続人の準確定申告を行って譲渡所得税を納付し、納付後の残金を受け入れ先の法人へ送金するケースが多く見受けられます。

(担当:福田)

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