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エクスプレスニュース No.31

「令和7年度税制改正大綱」

令和7年度税制改正大綱(令和6年12月20日)の改正項目のうち、特に影響が考えられる内容について解説します。
なお、大綱段階であり、最終的には3月に発表される法案をもとに国会を通過して初めて法律となりますので、本大綱の内容が確定ではないことをご了承下さい。

1.資産税関連の改正

1.結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の延長

その適用期限が令和9年3月31日まで2年延長されます。

2.相続税の物納制度の見直し

相続税の物納制度における物納許可限度額の計算について、物納許可限度額の計算の基礎となる延納年数は納期限等における申請者の平均余命の年数を上限とする等の見直しが行われます。

3.相続登記等の登録免許税の免除に関する特例措置の延長

①相続により土地を取得した個人が相続登記の前に死亡した場合の登録免許税の免税措置
個人が相続(相続人に対する遺贈を含む)により土地の所有権を取得した場合において、その個人がその相続による土地の所有権移転登記をする前に死亡したときは、その死亡した個人をその土地の所有権の登記名義人とするための登記についての登録免許税は免税となります。(本来は土地の価額に対して0.4%の税負担が発生)

②不動産の価額が100万円以下の土地に係る登録免許税の免税措置
土地について相続(相続人に対する遺贈を含む)に係る所有権の移転登記又は表題部所有者の相続人が所有権保存登記を受ける場合において、その登記に係る登録免許税の課税標準である不動産の価額(固定資産税評価額)が100万円以下であるときは、各登記に係る登録免許税は免税となります。(本来はそれぞれ土地の価額に対して0.4%の税負担が発生)

③上記の免税措置は令和9年3月31日まで適用期限が2年延長されます。

2.個人所得関連の改正

1.年収103万円の壁等の見直し

①所得税の基礎控除の見直し
 所得税の基礎控除について、合計所得金額が2350万円以下である個人の控除額が48万円から58万円に引き上げられます。

合計所得金額 基礎控除
2350万円以下 58万円
2350万円超2400万円以下 48万円
2400万円超2450万円以下 32万円
2450万円超2500万円以下 16万円
2500万円超 0万円

②給与所得控除の見直し
給与所得控除額について、最低保障額が55万円から65万円に引き上げられます。

③特定親族特別控除(仮称)の創設
居住者が生計を一にする年齢19 歳から22 歳までの親族等(その居住者の配偶者及び青色事業専従者等を除くものとし、合計所得金額が123 万円以下である者に限る)で控除対象扶養親族に該当しないものを有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額等から、下記の表のとおりの控除額が控除されます。
改正後は子等の合計所得金額が85 万円(給与収入が150万円)までは、親等が特定扶養控除と同額(63 万円)の所得控除を受けられ、子等の合計所得金額が85 万円を超えた場合でも、控除額が段階的に逓減する仕組みとなります。

  子等の合計所得金額 控除額
(給与収入ベース) 改正前 改正後
特定扶養親族の扶養控除 48万円以下(103万円以下) 63万円 63万円
58万円以下(123万円以下) 0万円
特定親族特別控除(仮称) 85万円以下(150万円以下)
90万円以下(155万円以下) 61万円
95万円以下(160万円以下) 51万円
100万円以下(165万円以下) 41万円
105万円以下(170万円以下) 31万円
110万円以下(175万円以下) 21万円
115万円以下(180万円以下) 11万円
120万円以下(185万円以下) 6万円
123万円以下(188万円以下) 3万円

④配偶者控除及び扶養控除の対象者の見直し
配偶者控除及び扶養控除の対象者である配偶者及び扶養親族の合計所得金額について、48万円以下から58万円以下に引き上げられます。

⑤上記の改正は、令和7年分以後の所得税(住民税は令和8年分以降)について適用されます。

2.子育て世帯の住宅ローン控除の借入限度額の上乗せ

令和6年分から住宅ローン控除の借入額の上限額は引き下げられていますが、子育て世帯に限り、借入額の上限額の適用が令和6年まで延長されていました。今回の改正により、子育て世帯の借入額の上限額の上乗せが延長されております。

①特例対象個人(個人で、年齢40歳未満であって配偶者を有する方、年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する方又は年齢19歳未満の扶養親族を有する方)が、認定住宅等の新築もしくは認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得又は買取再販認定住宅等の取得(「認定住宅等の新築等」)をし、令和7年中に居住の用に供した場合は、住宅借入金等の年末残高の借入限度額を次のとおり上乗せされます。

  特例対象個人 左記以外
認定住宅(認定長期優良住宅、認定低炭素住宅) 5000万円 4500万円
ZEH水準省エネ住宅 4500万円 3500万円
省エネ基準適合住宅 4000万円 3000万円

②認定住宅等の新築等に係る床面積要件の緩和措置(原則50㎡以上必要ですが、適用者の合計所得金額が1000万円以下の場合は40㎡以上)については、令和7年12月31日以前に建築確認を受けた家屋に適用されます。

3.確定拠出年金(イデコ等)の老齢一時金に係る退職所得課税の見直し

①退職所得の金額は、原則として次の算式で計算します。
 (退職金額 - 退職所得控除) × 1/2 = 退職所得

②退職所得控除の計算
退職所得控除は、原則として勤続年数に応じて、下記表の算式により計算します

勤続年数 算式
20年以下の場合 40万円×勤続年数
20年超の場合 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

上記の退職所得控除は、退職金を受け取るたびに受けられるわけではなく、現行では前年以前4年内に、他の退職金の受給がある場合には、前の退職金に係る勤続年数との重複期間については、退職所得控除の計算から排除することになります。
【具体例】
 ・A社での勤続年数:1998年1月1日~2022年6月30日
 ・B社での勤続年数:2010年7月1日~2024年12月31日
  上記のケースでは、B社の退職金に係る退職所得控除の計算上、A社とB社の勤続年数のうち、重複期間(2010年7月1日~2022年6月30日)に相当する控除額が減額されます。

③今回の改正内容
退職所得の一つであるイデコの一時金を受給した場合の退職所得控除は、イデコの一時金を受給した前年以前19年内に他の退職金がある場合には、イデコの一時金に係る勤続年数(加入年数)とその他の退職金に係る勤続年数との重複期間については、イデコの一時金に係る退職所得控除の計算から排除することになります。一方で「先」にイデコの一時金の受給を受け、その後に会社からの退職金を受け取った場合、その会社からの退職金に係る退職所得控除から排除する重複期間は前年以前4年内となっておりました。
今回の改正により、令和8年1月1日以降に支給を受けるイデコの一時金(会社からの退職金の前に支払を受けるもの)から、退職所得控除の計算における勤続年数から排除する重複期間の対象が、前年以前9年内(現行は上記のとおり4年内)に延長されます。
現行では60歳(一定の条件のもと受取年齢は60歳から75歳まで自由に選択可)でイデコを一時金として一括で受け取った後、5年後の65歳以降で会社からの退職金を受け取れば、退職所得にかかる退職所得控除の計算上、重複期間の排除をする必要がなかったため、控除額を最大化することができましたが、今後はその最大化できる年齢が10年後の70歳以降になります。
なお、今回の改正は確定拠出年金(イデコ等)の老齢一時金が対象であり、小規模企業共済の一時金は対象とはなりません。

先に受給の退職手当 後に受給の退職手当 現行 改正後
会社からの退職金 会社からの退職金 5年以内で判定
イデコの一時金 会社からの退職金 5年以内で判定 10年以内で判定
会社からの退職金 イデコの一時金 20年以内で判定

3.法人税関連の改正

1.中小企業等の法人税の軽減税率の特例の延長・見直し

中小企業者等の法人税率について、年800 万円以下の所得金額に対する税率を19%から15%に軽減されているところ、次の見直しの上、適用期限が2年延長(令和9年3 月31 日までに開始する事業年度に適用)されます。
なお、年800万円超の所得金額に対する税率は23.20%と変更はございません。
①所得金額が年10 億円を超える事業年度については、年800 万円以下の所得金額に対する税率は15%から17%に引き上げられます。なお、適用除外事業者(前3 年間の平均所得金額が15 億円超の中小企業)については、改正前と変わらず本則税率19%の適用となります。
②グループ通算制度の適用を受けている法人については、軽減税率の適用対象法人から除外され、本則税率19%が適用されます。

区分 税率
中小法人等※の年800万円以下の所得金額 ・グループ通算制度の適用法人
・適用除外事業者(前3年度の所得金額の平均額が15億円以下の法人など)
19%(本則)
所得金額が年10億円超の事業年度 17%(特例)
上記以外 15%(特例)

※中小法人等とは、資本金1億円以下の普通法人のうち、一定の法人をいいます。(一般的には資本金1億円以下の法人はおおむね該当します)

2.防衛特別法人税(仮称)の創設

①法人税額に対し、税率4%の新たな防衛特別法人税が課されます。
算式:課税標準法人税額【基準法人税額※-基礎控除額 年500万円(所得2400万円相当】×4%
※基準法人税額とは所得税額控除、外国税額控除等の適用前の法人税額

②上記の改正は、令和8年4 月1 日以後に開始する事業年度から適用されます。

(担当:佐藤)

※誠に恐れ入りますが、次回(2025年2月末)のエクスプレスニュースは休載とさせていただきます。

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